近所の、いつも前を通る家から荷物が運び出され、家の前の道路にこぼれるくらいに古本が積まれていた。ずいぶん前から人の気配が無くなったその家が、いよいよ取り壊しになるようだ。家と同様年季の入った古本の中には画集が多かったけれど、ちょっといい感じの表紙の、こんな本もあった。
人の子にねぐらあり―すまひ読本 (1954年):清水 一
家を片づけていた人に断って、もらってきちゃった。読んでわかったんだけど、著者は大成建設の取締役だった人だ。でも内容は、プロの小説家も顔負けという感じの洒脱なエッセイだった。昔の教養人はみんなこんなふうにしゃれた文章が書けたってことなのかなあ。
昭和29年といってもピンとこないけれど、終戦直後というよりは、世の中が豊かになり始めた頃という感じだ。そんな時代の普通の暮らしの風景がおもしろい。建築の名作を訪ねた話とかも出てくるけどちっとも専門的でなく、逆に安普請の家に住んでいた頃の話とか、なぜ貧乏人の(=狭い)家は、夏暑くて冬寒いのかの考察とかに、思わずくすりと笑ってしまう。昭和20年代の住まいの問題と、今のって、変わらないんだなあと思えるよ。
ところで、この本では漢字は、古い書体なんだけどね! 字体の古さに最初は目がチカチカしたけど、だんだん慣れてきたよ。。たまにはこういう書体の本を、ゆっくりゆっくり読むのもいいね。何より、こんな本を持っているだけで、ちょっと自慢できそうじゃない? でも誰も「その本なあに?」って聞いてくれなかったけどね。はたから見ても私がとっても楽しそうに読んでるように見えたと思うけどね。
こんなんじゃあどんな本かわからないだろうけど、内容に関しては他のブロガーさんの、なかなか詳細な感想を参考にしてね。⇒こちら
←超狭小住宅建築中の他の皆さんのブログ。うちより狭い所もあって、とっても参考になる。